一人エンジニアの私が、AIなしでは絶対にやれなかったこと
壁打ち相手がおらず「知らないことを知らない」状態だった一人エンジニア時代。AIが技術選定の相談相手になって変わったこと、それでもAIだけでは解決しないことを振り返ります。
以前、ほぼ一人で社内の開発を回していた時期があります。
当時の自分はエンジニアとしてまだ経験が浅く、周りに技術的な相談ができる人もいませんでした。「これってどう作るのが正解なんだろう」と思っても、聞ける相手がいない。ググって、試して、なんとなく動いたらそれでヨシ。そんな毎日でした。
同じような環境で開発をしている方、あるいはこれからAIを使って自分で何かを作ってみたいと考えている方に、当時の経験が少しでもヒントになればと思い、書いてみます。
一人エンジニアの「壁」
一人で開発していて一番きつかったのは、「知らないことを知らない」状態に気づけないことでした。
たとえば、当時GAS(Google Apps Script)で社内ツールをよく作っていたのですが、claspというローカル開発用のツールの存在を知らないまま、ずっとブラウザのエディタ上で直接コードを書いていました。知っていれば開発効率が段違いだったのに、「もっと良いやり方があるかもしれない」という発想すら浮かばなかった。
アーキテクチャの設計でも苦労しました。「このサービス、GASとスプレッドシートで済ませていいのか、それともCloud RunとCloud SQLで組むべきなのか」——こういう判断を迫られた時、壁打ち相手がいないのは本当にしんどかった。
誰かに話せば10分で整理できることを、一人で何日も立ち返って考えて、やっと決めて、それでも「本当にこれで良かったのか」とモヤモヤが残る。そんな繰り返しでした。
AIを「相棒」にしてから変わったこと
そんな一人開発の環境が大きく変わったのは、AIを日常的に使うようになってからです。
一番変わったのは、技術選定の「壁打ち相手」ができたこと。
たとえばさっきのアーキテクチャの話。「こういう要件のサービスを作りたいんだけど、GASで十分?それともCloud Runのほうがいい?」とAIに投げると、それぞれのメリット・デメリットを整理してくれる。もちろんAIの回答をそのまま採用するわけではないのですが、自分の考えを言語化して投げるだけで、頭の中が整理されるんです。
以前は一人で悶々と考えていた時間が、AIとの対話で一気にショートカットされるようになりました。
もう一つ大きかったのが、「知らないことを知らない」問題が減ったこと。AIに作業の進め方を相談すると、自分が見落としていたツールやアプローチを教えてくれることがある。claspの件も、AIに「GASの開発効率を上げたい」と相談していれば、もっと早く出会えていたはずです。
そして意外と助かっているのが、自分で決めた後のレビュー役。「この設計で進めようと思うけど、穴はない?」と聞くと、自分では気づかなかった観点を返してくれる。最終的に判断するのは自分ですが、決断の精度が上がった実感があります。
それでもAIだけでは解決しないこと
ここまで書くと「AIがあれば全部解決」みたいに聞こえるかもしれませんが、正直そんなに甘くはないです。
まず、AIの回答が正しいとは限らない。特にアーキテクチャのような正解が一つではない領域では、AIはもっともらしいことを言うけれど、自分の環境や制約に完全にフィットする答えを出してくれるわけではありません。結局、自分で手を動かして検証する力がなければ、AIの提案を活かしきれない。
それから、最終的な判断と責任は自分にあるということ。AIは選択肢を整理してくれるけれど、「どれを選ぶか」を決めるのは自分です。一人エンジニアである以上、その重さは変わりません。
AIは優秀なアシスタントではあるけれど、上司でも先輩でもない。「任せる」のではなく「使いこなす」という意識がないと、かえって遠回りになることもあると感じています。
一人エンジニアのノウハウは「AI時代の開発スキル」そのもの
振り返ってみると、一人エンジニアとしてやってきたことって、実は特別なことではなかったなと思います。
- 作りたいものを言語化する
- AIに壁打ちしてもらいながら技術選定する
- 自分で手を動かして検証する
- AIにレビューしてもらって精度を上げる
これって、エンジニアだけの話ではないはずです。
最近は非エンジニアの方でもAIと対話しながらアプリやツールを作る「AI駆動開発」が現実的になってきています。そこで求められるのは、プログラミングの知識よりも、「何を作りたいか言語化する力」と「AIの回答を検証する力」 だと思っています。
一人で開発していた頃の自分がやっていたことは、まさにそれでした。相談相手がいない中で、自分の考えを整理して、調べて、試して、判断する。AIはそのプロセスを加速してくれる存在であって、代わりにやってくれる存在ではない。
この感覚は、これからAIを使って何かを作ってみたいと考えている方にとっても、きっと同じだと思います。
一人で開発を回すのは、正直しんどいこともたくさんありました。でも、AIという相棒を得たことで、「一人でもここまでできる」という実感は確実に広がりました。
そして今思うのは、この経験は無駄じゃなかったということです。一人だったからこそAIの価値がわかる、一人だったからこそAIとの付き合い方が身についたと思っています。
私の体験が少しでも参考になれば幸いです。